子どもが将来、自分で食を選び、健康的な生活を送っていくためには、「食の自立」が欠かせません。その土台となるのが、幼児期に育まれる“食べる力”です。
“食べる力”とは、単に食べ物を噛んで飲み込むといった身体的な機能だけでなく、空腹や満腹といった身体の感覚を感じ取る力、自分の気持ちや食べたいものを言葉で伝える力、食事の場でのマナーや他者との関わり方、さらには食への興味・関心、意欲など、心と体の両面にまたがる力を指します。
この“食べる力”を育てるために、まず大切なのは「食事の時間を心地よく過ごすこと」です。
大人が「残さず食べなさい」「これも食べないとだめよ」といった言葉で無理に食べさせようとすると、子どもにとって食事の時間がプレッシャーやストレスの場になってしまうことがあります。そのような関わりではなく、子どもがリラックスして食事に向き合える雰囲気を整え、食べられたことを一緒に喜ぶことが、前向きな気持ちにつながります。
また、子ども自身が「食べたい」「やってみたい」と思えるような働きかけも大切です。
買い物や料理の場面に少しずつ参加することで、食材や食事への関心が高まります。たとえば、一緒に買い物へ行き「にんじんはどこにあるかな?」と探してもらう、お家で「今日はこれを洗ってみようか」と簡単なお手伝いをお願いする、といった体験が、子どもの自信や意欲を育て、食への主体的な関わりにつながります。
さらに、「食べることは楽しい」「家族と一緒に食べる時間がうれしい」と感じられるような経験を重ねることも、食の自立に向けた大切なステップです。
会話を楽しみながらの食事、旬の食材を味わうこと、一緒に料理をする時間などを通して、子どもの中に食への前向きな気持ちが育まれていきます。
幼児期は、“食べる力”を少しずつ育んでいく大切な時期です。焦らずに、その子のペースを大切にしながら、日々の食事の中でできる小さな関わりを積み重ねていきましょう。
その積み重ねが、将来、自分の健康を自分で守る「食の自立」へとつながっていきます。